経理の記帳をする際に、売上の日付をいつにするかというのは、一貫した基準に基づいて考えなければなりません。
売上計上の基準を期ごとに変更するような事があると、税務調査の時に租税回避や利益操作を疑われる要因になります。
日本の会計基準では、費用は「発生主義」で、収益は「実現主義」で認識するのが原則となっています。
売上は「実現主義」に基づいて計上する
会計の考え方として、発生主義、実現主義、現金主義というものがあります。こういった専門的な用語の説明は別の機会にいたしますが。
今回は実現主義に基づいた売上計上のタイミングを、具体的に見ていきたいと思います。
所得税関係の基本通達
国税庁の法令解釈通達によれば、
事業所得の総収入金額の収入すべき時期として、請負契約に関する考え方が示されています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
(4) 請負による収入金額については、物の引渡しを要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の提供を完了した日。ただし、一の契約により多量に請け負った同種の建設工事等についてその引渡量に従い工事代金等を収入する旨の特約若しくは慣習がある場合又は1個の建設工事等についてその完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金等を収入する旨の特約若しくは慣習がある場合には、その引き渡した部分に係る収入金額については、その特約又は慣習により相手方に引き渡した日
(5) 人的役務の提供(請負を除く。)による収入金額については、その人的役務の提供を完了した日。ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日
第2款 所得金額の計算の通則 法第36条《収入金額》関係
ここでは、次のような取引についての解釈が明示されています。
- 物の引き渡しを要する請負契約
- 物の引き渡しを要しない請負契約
- 建設工事などの契約
- 人的役務の提供
物の引き渡しを要する請負契約
例として、ソフトウェア開発の仕事で、プログラム5本の作成を請け負ったとします。
10本を納品しましたが、発注者が確認したところ、2本でバグがあり、修正し再度納品しました。
その後、請求書を発行し、売上金が振り込まれました。
この場合、目的物の全部を完成して、相手方に引き渡した日が売上の日になるので、バグを修正し再度納品した日に売上を計上します。
物の引き渡しを要しない請負契約
コンサルティングサービスや有償のアフターメンテナンスのような、明確な成果物が定義されていない場合、は「いつからいつまでを人的期役務が提供される期間か」を明確に契約しておくと安心です。
この場合は、その役務の提供が完了した日で売上の計上を行います。
ただし、コンサルティングサービスでも業務内容によっては、明確に成果物を定義した契約を行う事によって、成果物の納品を行ったタイミングで売上を計上する事もできます。
定義する成果物としては、報告書や手順書などのドキュメント類が考えられます。
建設工事等の場合
建設業で工事を請け負う場合、期間が長かったり作成物が大量である事が想定できます。
完成した部分の引き渡しの都度、工事代金を受領する旨の特約や慣習がある時は、完成した部分について相手方に引き渡した日をもって売上を計上するような契約にします。
簿記の基本的なルールとして、引き渡しまでに掛かった工事の費用は仕掛勘定になり、売上が計上されるまでは、原価にはできません。
工事から引き渡しまで、決算期をまたぐときは利益操作の余地があるため、税務署も注意深くなるポイントです。
在庫の販売について
商品の販売にかかる売上の実現基準は、業種やサービスによって変わってきます。
出荷した日、船やトラックに荷物を積み込んだ日、相手方に荷物が到着した日、相手方が検収した日など、業態にあった基準を採用することができます。
ただし、一度採用した基準を期ごとに変える事は出来ないと考えた方が良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。
税法をしっかり理解して正しく会計処理をしていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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